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資産形成

60代、定年退職後の資産運用はどうする?退職金・年金の良い活用法とは?

公開日:2026年8月10日執筆・監修:芳川 宏輔(CFP®認定FP)

こんな悩みはありませんか?

  • 退職金というまとまったお金を、どう管理・運用すればいいのか分からない
  • 大切な資金だから減らしたくない。でも預けているだけでいいのか不安
  • 年金の受け取り方や、退職金の置き場所で損をしたくない
  • 親の介護・相続や、自分の認知症・資産凍結のことも気がかり

定年退職を迎え、退職金というまとまったお金を手にした今、「これをどう管理・運用すればいいのだろう」と悩んでいませんか。これからのセカンドライフを支える大切な資金だからこそ、減らしたくないと慎重になるのはごく自然なことです。

60代からの資産運用の最大のポイントは、「大きく増やす」ことではなく、「守りながら、長く使えるようにする」デキュムレーションです。失敗が許されない年代だからこそ、退職金や年金の正しい活かし方、そして避けるべきリスクを押さえることが重要になります。この記事では、60代が押さえるべき資産の取り崩し方から、独身・夫婦ごとのポイント、注意すべきリスク、さらには親の介護や相続の準備までわかりやすく解説します。

60代の資産運用のポイントは?

「増やす」から「守りながら使う」へシフトする

60代からの資産運用における大原則は、デキュムレーション(decumulation)をどうするのかです。デキュムレーションとは、現役時代に積み上げた資産を、退職後などの人生後半に計画的に引き出し・活用していくプロセスを指します。現役世代の資産形成期(アキュムレーション)の対義語です。

資産形成期(アキュムレーション)と資産活用期(デキュムレーション)の概念図。現役時代は資産を増やし、退職後は計画的に取り崩していくことを山型で表した図解

つまり「資産を増やすフェーズ」から「守りながら計画的に取り崩し活用するフェーズ」へ頭を切り替えることです。なぜなら60代で万が一大きな損失を出してしまった場合、現役時代と違って働いてリカバリーする時間が限られているためです。

「取り崩しながら運用する」という考え方

デキュムレーションの核は「いつ、いくら、どの資産から使うか」です。長寿リスクや市場の変動リスク(収益率配列リスクなど)に備えつつ、枯渇を防ぎながら老後の生活の質(満足度)を高めるために、以下のような手法で取り崩します。

資産形成期と資産活用期の全体像。定額取り崩し・定率取り崩し・増やしながら使うといった取り崩しパターンを図解したインフォグラフィック
取り崩し方法やり方メリットデメリット
定率取崩し法運用しながら残高に対する一定の割合(年4%など)を引き出す相場が良い時は多く、悪い時は少なく引き出すため資産が長持ちしやすい受け取れる金額が毎年変動する
定額取崩し法毎月(毎年)一定の金額を引き出す資金計画が立てやすい相場下落時には資産の減りが早くなる傾向がある

お金をただ預貯金で管理して使って減らしていくのではなく、「運用を継続しながら少しずつ取り崩す」ことで、資産の寿命を延ばすことができます。

独身(単身)世帯の場合

夫婦(二人以上)世帯の場合

退職金、年金をうまく運用する方法は?

退職金は「すぐに運用先を決めない」

退職金が口座に入った直後は、金融機関や保険会社から「退職金特別プラン」「一時払い終身保険や変額保険」などの勧誘が増えますが、その場で即決するのは非常に危険です。まずは次のステップの色分けを先にしましょう。

お金を「3つに色分け」して管理する

退職金を含めた手元の資金は、使う時期や目的に応じて以下の3つに整理しましょう。

色分けの分類対象となる資金の用途主な置き場所・運用先
① 生活防衛費日常の生活費×12か月分+非常用資金(医療・予備費)銀行の普通預金・定期預金
② 目的資金5〜10年以内に使う予定(リフォーム、車の買い替え、旅行など)普通預金・個人向け国債など
③ 資産運用資金10年以上使わない、インフレ対策用の長期運用資金投資信託(インデックスファンド)

60代におすすめの運用先(③資産運用資金の範囲内で)

NISA制度は運用で得た利益が非課税になる制度です。60代からでも活用するメリットは十分にあり、無理のない範囲で長期・積立・分散投資を行うことで、非課税枠を活かした資産形成が可能です。

NISAのしくみの図解。通常は運用益(売却益・配当/分配金)に約20%課税されるが、NISA口座では非課税になることを示す図
NISAの枠金額備考
つみたて投資枠年 120万円長期・積立・分散に適した投資信託
成長投資枠年 240万円上場株式・投資信託など
年間投資枠 合計年 360万円つみたて+成長の合算
非課税保有限度額生涯 1,800万円うち成長投資枠は1,200万円まで

NISAの年間投資枠は360万円、1人あたりの非課税保有限度額は1,800万円です。そのため、NISAだけではなく、課税される特定口座を併せて使用することも検討しましょう。

年金を最大限活かす工夫

公的年金は「死ぬまで毎月受け取れる、生涯にわたる最大の柱」です。年金の受給開始を65歳から遅らせる(繰り下げる)ことで、1か月遅らせるごとに受給額が0.7%増額されます(最大75歳まで繰下げ可能、最大84%増)。健康状態や受給までの生活費に余裕がある場合、有効な選択肢となります。

受給開始受給率備考
65歳(基準)100%本来の受給開始年齢
66歳まで繰下げ+8.4%1か月ごとに0.7%増
70歳まで繰下げ+42%
75歳まで繰下げ+84%繰下げの上限。増額は生涯続く

老齢基礎年金・老齢厚生年金それぞれについて増額され、増額は生涯続きます。どちらか一方のみ繰下げすることも可能です。なお、60代後半も働いて収入を得る場合、給与と年金の合計額によっては年金の一部が支給停止となる仕組み(在職老齢年金)があり、働き方を工夫する際の一つの基準となります。

逆にやってはいけないことは?リスクは?

失敗が許されない60代の資産運用において、「絶対にやってはいけないNG行動」を頭に入れておくことが、最も重要なリスク管理です。

退職金を一括でハイリスク商品に投じる

一度失った資産を取り戻す時間は残されていません。ハイリスク商品への集中投資は厳禁です。

金融機関の「退職者向けパッケージ商品」に飛びつく

退職金活用プランの金利が一見高く見えても、初年度のみの金利設定や、抱き合わせの高額な手数料で損をするケースが多発しています。

毎月分配型投資信託に安易に頼る

毎月分配金が出る商品は魅力的に見えますが、運用成果によっては運用益ではなく「自分の元本を取り崩して支払われている(特別分配金)」ケースもあり、実質的に資産が減ってしまうリスクがあります。

詐欺・悪質な勧誘に乗る

「絶対儲かる」「元本保証で高利回り」「あなただけに教える」という言葉はすべて詐欺だと疑いましょう。60代は投資詐欺・悪質な勧誘の格好のターゲットです。

色分けをせずに、適当な金額を運用に回す(回さない)

①生活防衛費・②目的資金までをリスク資産に変えてはいけません。使う時期で色分けをしてから運用額を決めましょう。

孫や子どもへの援助をしすぎる

孫の教育費や子どもの住宅資金を援助しすぎた結果、自分の老後資金が不足しては本末転倒です。「まずは自分の生活防衛が最優先」と割り切ることが親心の第一歩です。

口座・資産を整理しないまま認知症が進む

資産の存在を整理しないまま認知症が進むと、資産が凍結され家族すら動かせなくなります。判断力があるうちに整理しておくことが不可欠です。

経験のないビジネスを一念発起で始める

まとまった資金を元手に未経験の事業やスクール起業に踏み切り、初期投資や集客難で退職金を失う事例も少なくありません。安易な起業には慎重な検討が必要です。

高齢の親の資産管理はどうすればいい?

60代になると、80〜90代を迎える親の介護や資産管理、相続問題に直面することも多くなります。親の資産と自分の資産は切り離して考えつつ、早めの備えが必要です。

親の資産の把握と家族間での共有

親が元気なうちに、どこにどのくらいの預貯金があるのか、不動産の所在、株式や債券などの有価証券、加入している保険などを把握しておきましょう。情報共有がないまま相続を迎えると、きょうだい間での「争族(相続トラブル)」に発展しやすくなります。このコミュニケーションは意外と難しく時間がかかるため、認知機能がしっかりしているタイミングで、帰省の際や年末年始を活用して継続的にとっておきましょう。

認知症による「資産凍結リスク」への対策

高齢化の進展とともに、認知症と診断される人も増加しています。65歳以上を対象にした令和4年度(2022年度)の調査推計では、認知症の人の割合は約12%、前段階の軽度認知障害(MCI)の人の割合は約16%とされ、両方を合わせると3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになります。

12%
16%
72%
認知症12%)
軽度認知障害(MCI)16%)
上記以外72%)

<参考:令和4年度 認知症および軽度認知障害の有病率調査(65歳以上・推計)>

認知症で判断能力が低下すると、本人名義の銀行口座や不動産などの財産が事実上凍結されます。年金の受取口座への振込は継続されますが、預金の引き出し、定期預金の解約、株式・不動産の売却などが一切できなくなります。介護費用や生活費が引き出せなくなる事態を防ぐため、成年後見制度の利用や、元気なうちの家族信託などの事前対策が不可欠です。あらかじめ代理人(任意後見人)を公正証書で選んでおく、各金融機関の「代理人カード」「代理人登録制度」を利用しておく、といった備えも有効です。

相続の基礎知識と専門家の役割

相続税には基礎控除額があり、これを超える資産がある場合は、生前贈与や遺言書の作成、生命保険の非課税枠の活用などが有効な対策となります。

相続税の基礎控除

3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

生命保険の非課税枠

500万円 × 法定相続人の数

ポイント
具体的な税額の計算や法的書類の作成、申告手続きは、税理士や司法書士の専任分野です。ファイナンシャル・プランナー(FP)は、資産全体を見渡した課題の整理や、必要に応じた各種専門家への橋渡し役として活用できます。親の相続に向き合うプロセスは、巡り巡って「自分自身の将来の相続対策」を整理する絶好の機会にもなります。

資産運用に悩んだらどうすればいい?

60代の資産運用は、運用メインではなくデキュムレーション戦略です。「退職金の最適な置き場所」「年金の受け取り時期」「資産の取り崩しペース」「親と自分の相続対策」など、複雑な要素が一度に押し寄せてきます。これらをすべて自分一人で正しく判断するのは非常に困難です。

さらに、60代は「退職金を狙った営業活動」が最も激しい年代でもあります。銀行や証券会社などの無料相談窓口に行くと、どうしても手数料の高い金融商品を勧められてしまう構造が存在します。そこでおすすめしたいのが、「有料相談型の独立系FP(ファイナンシャル・プランナー)」の活用です。

有料相談型の独立系FPは、商品手数料(バックマージン)目的の提案がないため、高額な投資信託や不要な保険を売り込まれる心配がありません。退職金の活用に悩んだ際、「本当に何も買わずに定期預金のままでいいのか」「この提案は妥当か」といった客観的なアドバイスが得られます。相談料を直接いただく仕組みだからこそ、100%相談者の味方となってライフプランを一緒に設計してくれます。

まとめ

60代の資産運用で最も大切なのは、大きく増やすことではなく、大切な退職金と年金を守りながら、安心して長く暮らせるように設計することです。退職金という大きな資産を手にした今こそ、焦って動かず慎重に、そして中立な立場の専門家と一緒にこれからの資金計画を考えていきましょう。

ポイント
この記事のポイント
  • 60代の資産運用は「増やす」から「守りながら長く使う」へシフトする
  • 退職金はすぐに運用せず、まずは口座に置いて「3つに色分け」して考える
  • 年金は受給繰下げなども含め、生涯受け取れる最大の柱として活かす
  • 退職金の一括高リスク投資・高手数料なセット商品・詐欺には厳重に警戒する
  • 親の介護費用や資産凍結・相続対策も、元気なうちに家族で共有しておく
  • 迷ったら、金融商品を売らない「中立な有料FP」へ相談するのが安心

退職金の運用方法や年金の受け取り方、親の資産管理のことで悩んだら、金融商品を販売しない中立な有料相談型FPへ相談することが、安心した定年後を迎えるための賢い選択肢です。「資産相談ドットコム」で、あなたに合った信頼できるパートナーを見つけてみてください。

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