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資産形成

50代からの資産運用はどうする?老後資金の作り方

公開日:2026年8月10日執筆・監修:芳川 宏輔(CFP®認定FP)

こんな悩みはありませんか?

  • 今の資産残高で、本当に老後は大丈夫だろうか……
  • 「NISAを始めた」「老後資金は〇千万円必要」と聞くたびに焦ってしまう
  • 退職までもう時間がない気がして、今から始めても遅いのでは
  • 自分たちの老後だけでなく、親の介護や相続のことも気がかり

50代を迎え、定年退職やセカンドライフが現実味を帯びてきた中で、「今の資産残高で本当に大丈夫だろうか」と不安を感じている方は少なくありません。同僚や友人との会話、SNSなどで「NISAを始めた」「老後資金は〇千万円必要」といった声を聞くたびに、焦りや心配が募ってしまうこともあるかもしれません。

50代の資産運用は、大きなリスクを取って爆発的に増やすのではなく、「守りながら着実に育てる」ことが基本となります。退職までの残り時間が10〜15年程度と限られているからこそ、今からでもできる確実な対策を打つことが極めて重要です。また、この時期は自分たちの老後資金だけでなく、親世代の資産管理や相続という一歩踏み込んだ視点も大切になってきます。本記事では、50代が知っておくべき老後資金の現実的な目安や、今からでも間に合う堅実な運用方法、そして特有の課題を乗り越えるためのステップを解説します。

50代の資産運用がなぜ必要?

「今さら資産運用なんて」「もう始めても遅いのではないか」と思われがちですが、50代からの資産運用には明確な必要性とメリットがあります。まずは、私たちが直面している現実を整理してみましょう。

公的年金だけでは生活費が不足しやすい現実

総務省の「家計調査報告(2025年/令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における平均的な実収入(年金中心)は約25万4,000円です。これに対し、消費支出(生活費)は約26万4,000円。さらに税金や社会保険料などの非消費支出を加えると、毎月約4万2,000円の赤字となり、不足分は貯蓄の取り崩しなどで補う必要があります。

項目金額の目安備考
実収入(年金中心)月額 約25.4万円社会保障給付が中心
消費支出(生活費)月額 約26.4万円食料・住居・光熱費など
非消費支出税金・社会保険料など実収入から差し引かれる
差引(毎月の不足)月額 約4.2万円の赤字貯蓄の取り崩しで補填

<出典:総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025(令和7)年平均結果の概要」>

各種世論調査でも、公的年金だけで老後の生活費を「まかなえるとは思わない」と答える人が約7割にのぼるなど、自助努力の必要性は高まっています。

退職金だけに頼るリスク

最近は企業型確定拠出年金(DC)へのシフトが進み、企業があらかじめ決めた掛金を拠出し、従業員自身が運用するスタイルへ移行する企業が増加しています。これにより支給額が運用実績に左右されるようになりました。また、資産運用の経験がないまま急に運用を始めたり、気が大きくなって使いすぎてしまう「退職金クライシス」に陥るリスクもあります。退職金だけで老後をカバーしようとするのは、現代においてはリスクを伴います。

インフレによる「現金の目減り」対策

物価が上昇している局面(インフレ)では、預金金利が物価上昇率に追いつかなければ、銀行に預けているだけの「貯金」は実質的に価値が目減りしていきます。退職金も、物価上昇に対して引き上げが追いついておらず、実質的な価値は減少傾向にあります。10年前と同じ100万円でも買えるモノが少なくなってしまうため、一部をインフレに強い資産で運用する意義があります。

インフレのイメージ図。物価が上がると同じ100円玉で買えるものが減り、現金の価値が実質的に目減りすることを示す図解
注意
「元本が減らないから安心」と預金だけで持ち続けることが、インフレ下ではかえって“ゆっくり資産価値が減る”リスクになり得ます。すべてを運用に回す必要はありませんが、使う予定のない一部の資金はインフレに負けない資産で運用するという視点が、これからの時代には欠かせません。

50代には「まだ10〜15年」の時間がある

定年が65歳や70歳へと引き上げられる現代において、50代であれば退職まで10〜15年ほどの期間があります。投資の世界において10年以上の期間があれば、長期分散ポートフォリオを構築し、複利効果(運用で得た利益がさらに利益を生む仕組み)を十分に活かすことが可能です。「もう遅い」と諦める必要はまったくありません。

必要な老後資金はどのくらい?

50代になると、「実際に自分の老後資金はいくら必要なのか」という具体的な数字が気になりますよね。まずは世間一般のデータから、大まかな目安を掴んでみましょう。

老後生活費と年金受給額の目安

生命保険文化センターの2025年度の調査等によると、老後の生活費のイメージは以下の通りです。夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.9万円(「20万円以上25万円未満」が26.7%で最多)。ゆとりのための上乗せ額は平均15.2万円で、合計した「ゆとりある老後生活費」は平均39.1万円となっています。

項目金額の目安備考
最低日常生活費(夫婦2人)月額 平均 23.9万円「20万円以上25万円未満」が26.7%で最多
ゆとりのための上乗せ額月額 平均 15.2万円旅行・レジャーや趣味などの充実分
ゆとりある老後生活費月額 平均 39.1万円最低日常生活費+上乗せ額の合計

<出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2025(令和7)年度>

一方、厚生労働省が公表する公的年金の受給額の目安(平均的な収入で40年間働いた会社員と専業主婦の夫婦モデル)は、夫婦2人で月額約23万円〜27万円です。

ポイント
【収支のイメージ】最低限の生活を送るだけであれば年金でほぼトントンですが、旅行に行ったり、お孫さんにプレゼントを買ったりする「ゆとりある生活」を送るためには、毎月約15万円前後の不足が生じる計算になります。

不足額の総額シミュレーション

仮に毎月15万円の不足が発生し、リタイア後の生活が25年間(65歳から90歳まで)続くと仮定した場合、必要な準備額は以下のようになります。

15万円 × 12ヶ月 × 25年 =

約4,500万円

100歳まで生きるとなると、さらにお金が必要です。ただし「真の必要額」は住宅ローンの有無、退職金の額、受給できる年金額、そして望むライフスタイルによって一人ひとり全く異なります。平均額はあくまで目安であり、まずは「自分自身の数字」を知ることが第一歩です。

介護費用も視野に入れておく

老後資金を考えるうえで見落とせないのが「介護費用」です。介護には、住宅の改修や介護ベッドの購入といった一時的な費用に加えて、月々の費用が数年間にわたって発生します。

費用の種類金額の目安備考
一時的な費用平均 約74万円住宅改修・介護ベッド購入など
月々の費用平均 約8.3万円/月数年間にわたり発生
トータルの目安一人あたり 約500万円前後夫婦2人分のリスクも念頭に

<参考:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」等>

トータルで一人あたり平均500万円前後の備えが必要とされているため、夫婦2人分の介護リスクも念頭に置いた資産設計が必要です。

今から始めるとどのくらい貯蓄ができる?

50代から資産運用を始めた場合、具体的にどのくらいお金を増やすことができるのでしょうか。10年〜15年の積立期間を設けたシミュレーションで確認してみましょう。

① 55歳から65歳までの10年間、毎月5万円を積み立てた場合

運用利回り10年後の元本+運用益運用益
0%(貯金のみ)約600万円
年利5%(堅実な運用)約772万円+約170万円
年利7%(積極的な運用)約855万円+約280万円

※積立元本600万円。一定の利回りで複利運用できたと仮定した試算です。

毎月5万円を10年間・年利5%で積み立てた場合のシミュレーション。将来の運用資産額は約772万円毎月5万円を10年間・年利7%で積み立てた場合のシミュレーション。将来の運用資産額は約855万円

② 50歳から65歳までの15年間、毎月10万円を積み立てた場合

運用利回り15年後の元本+運用益運用益
0%(貯金のみ)約1,800万円
年利5%(堅実な運用)約2,600万円+約600万円
年利7%(やや積極的な運用)約3,100万円+約1,300万円

※積立元本1,800万円。一定の利回りで複利運用できたと仮定した試算です。

毎月10万円を15年間・年利5%で積み立てた場合のシミュレーション。将来の運用資産額は約2,600万円毎月10万円を15年間・年利7%で積み立てた場合のシミュレーション。将来の運用資産額は約3,100万円

50代からであっても、期間を味方につけて複利運用を行うことで、ただ貯金するだけの場合と比べて大きな差が生まれることがわかります。

目標額から逆算する「毎月の必要積立額」

「65歳までに1,000万円を追加で用意したい」と考え、55歳からの10年間で準備する場合、毎月の積立額は以下のようになります。運用を組み合わせることで、毎月の積立負担を軽減させることができます。

金利0%(貯金のみ)毎月 約8.3万円
年利5%で運用毎月 約6.4万円
年利7%で運用毎月 約5.8万円
65歳までに1,000万円を用意する場合の毎月の必要積立額。年利5%運用なら毎月約6.4万円65歳までに1,000万円を用意する場合の毎月の必要積立額。年利7%運用なら毎月約5.8万円
注意
上記のシミュレーションは一定の利回りで複利運用できたと仮定した試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。なお、退職金を適切な割合で運用に回すことで、さらにブーストをかけることもできます。

50代におすすめの資産運用

50代の資産運用の大原則は、積極的なポートフォリオ運用ではなく「守りのポートフォリオ運用」です。リスクを適度に抑えつつ、税制優遇などのメリットを最大化できるおすすめの選択肢を紹介します。

50代から始める賢い資産形成の選択肢。NISA・iDeCo・個人向け国債・金投資それぞれの特徴を示した図解
NISA(少額投資非課税制度)

運用益に税金がかからないNISAは、50代でも強力な味方です。制度が恒久化され非課税保有期間が無期限になったため、60代・70代になっても非課税で保有し続けられます。「つみたて投資枠」でコツコツ分散投資を行うほか、まとまった退職金の一部を「成長投資枠」で手堅い投資信託に分散投資する使い方も可能です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

掛金が全額所得控除になるため、収入のピークを迎える50代にとって高い節税効果を得られます。50代からでも加入可能で、今後はさらに加入可能年齢の拡大が予定されています。ただし、原則60歳(加入期間によってはそれ以降)まで引き出しが制限される点や、受給開始時期をライフプランに合わせる必要がある点には注意が必要です。

個人向け国債

国が元本と利子の支払いを保証する「個人向け国債(変動10年など)」は、極めて安全性が高い資産です。金利の上昇局面にも対応しやすく、ポートフォリオの中で「絶対に減らしたくない守りの資産」として重宝します。

金(ゴールド)投資

金は、株式や債券などとは値動きの異なる「第3の資産」です。ポートフォリオの10%程度を目安に取り入れると、分散効果を高められるかもしれません。

50代の資産配分の考え方

アメリカでは1990年代ごろまで、運用資産に占めるリスク資産の割合は「100 − 年齢」(%)が目安とされていました。しかし、平均寿命は当時から大きく延びています。

平均寿命1980年2030年(予測)
米国・男性70.0歳78.1歳
米国・女性77.5歳82.7歳
日本・男性73.4歳82.7歳
日本・女性78.8歳88.8歳

<参考:厚生労働省「簡易生命表/完全生命表」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」>

男女とも10年程度寿命が延びており、より長期間リスク資産で運用する必要が生じています。その結果、現状に合った目安は「110 − 年齢」(%)、積極的な割合なら「120 − 年齢」(%)をリスク資産にする、という考え方といえます。

具体例
55歳の場合、「110 − 55 = 55%」〜「120 − 55 = 65%」程度をリスク資産(投資信託など)に、残りを預貯金や個人向け国債といった守りの資産に配分する、というのが一つの目安です。もちろん、必要な生活防衛資金を確保したうえで、リスク許容度に応じて調整しましょう。

逆にやってはいけないことは?

50代の投資において、「一歩の踏み外し」はリタイア後の生活を大きく脅かす原因になります。以下のNG行動は絶対に避けましょう。

50代の投資で絶対に避けるべきNG行動。退職金の一括高リスク投資・高手数料商品・一発逆転の短期集中投資・よく分からない商品や投資詐欺を示した図解

退職金を一括で高リスク商品に投じる

退職金などで一度にまとまった資金が入った際、金融機関や保険会社に勧められるままによく分からない商品へ投資し、資産を大きく減らしてしまう失敗が後を絶ちません。

「退職金運用プラン」などの高手数料商品に飛びつく

窓口や会社から提案される「退職者向け特別プラン」の中には、最初の数ヶ月だけ高金利でお得に見えても、その後の購入手数料や信託報酬(管理費用)が非常に高く設定されているケースがあります。

一発逆転を狙った短期・集中投資

「老後資金が足りないから」と、暗号資産や個別株への集中投資、レバレッジ取引に手を出すのは極めて危険です。20代・30代と異なり、50代で大損をすると挽回する時間がありません。

よく分からない商品に投資する

仕組みが複雑な「仕組債」や「外貨建て保険」などは、手数料が高く、予想外の損失を被るリスクがあります。自分が他人に説明できないような商品は購入しないのが鉄則です。

投資詐欺に注意する

「元本保証で月利10%」「あなただけに教える秘密の投資話」といった甘い言葉は100%詐欺です。退職金などを狙った巧妙な投資詐欺が増える年代ですので、怪しい勧誘には決して乗らないでください。

生活防衛資金まで投資に回す

病気や怪我、親の介護など急な出費に備える「生活防衛資金(生活費の半年〜1年分程度)」は必ず手元の現金で確保し、それ以外の「余剰資金」で運用を行いましょう。

高齢の親の資産管理はどうすればいい?

50代特有の大きな課題が、「親の資産・介護・相続」です。自分たちの老後資金を準備するのと並行して、親世代のサポートも視野に入れる必要があります。

まず「親の資産状況の把握」から

親が元気なうちに、預貯金・保険・不動産・年金などの資産情報を共有してもらうことが大切です。デリケートな話題で切り出しにくい場合は、「将来、もし入院や介護が必要になったときに手続きで困らないように、今のうちに教えてほしい」と、親を思いやる切り口で話してみるのがスムーズです。

認知症による資産凍結リスクへの対策

高齢化の進展とともに、認知症と診断される人も増加しています。65歳以上を対象にした令和4年度(2022年度)の調査推計では、認知症の人の割合は約12%、前段階の軽度認知障害(MCI)の人の割合は約16%とされ、両方を合わせると3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになります。

12%
16%
72%
認知症12%)
軽度認知障害(MCI)16%)
上記以外72%)

<参考:令和4年度 認知症および軽度認知障害の有病率調査(65歳以上・推計)>

親が認知症などによって判断能力を失うと、銀行口座が凍結され、家族であっても親の口座から介護費用や医療費を引き出せなくなります。このリスクを防ぐため、元気なうちに「家族信託」や「任意後見制度」の利用を検討したり、銀行の「代理人カード(予約登録等)」の手続きを済ませておくといった事前の備えが極めて有効です。特に不動産経営や事業をされている方は、早めの対策が重要になります。

相続の基礎知識

相続が発生した際、相続税が課税されるかどうかは「基礎控除額」が基準となります。

基礎控除 3,000万円 +(相続人の数 × 600万円)

例えば相続人が子ども2人の場合、基礎控除3,000万円+(2人×600万円)=4,200万円が基礎控除額となり、相続財産がこれを超えなければ相続税はかかりません。超える可能性がある場合は、生前贈与の活用や相続時精算課税制度の活用など、早めに対策を講じることで選択肢が広がります。

ポイント
具体的な相続税の試算や確定申告、登記手続きなどは、税理士や司法書士などの国家資格を持つ専門家の領域です。FP(ファイナンシャルプランナー)は、資産全体の見取り図を整理し、必要に応じてこれらの専門家へ橋渡しをする役割を担います。

資産運用に悩んだらどうすればいい?

50代のマネープランは、ご自身の「日々の家計」や「これからの運用」だけでなく、「定年退職金の使い道」「親の介護費用」「相続対策」などが複雑に絡み合います。これらをすべて一人で整理し、最適な答えを出すのは決して簡単ではありません。もし悩んだら、「有料相談型」のFPに相談することをおすすめします。

多くの無料FP相談や金融機関の窓口は、投資信託や保険の販売手数料で利益を得ているため、どうしても自社の商品を売り込まざるを得ない構造になっています。しかし、相談料を支払う「有料相談型FP」は、金融商品の販売を目的としていません。退職金というまとまった資産を狙われやすい50代だからこそ、「金融商品を販売しない、完全中立な専門家」のアドバイスを受ける価値は極めて高いと言えます。

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まとめ

最後に、今回のポイントを振り返ってみましょう。

50代からの資産運用は、決して遅くありません。大切なのは、焦って大きなリスクを取ることではなく、ご自身の老後に本当に必要な額を知り、守りながら着実に育てることです。老後資金や親の資産のことで悩んだら、特定の金融商品を販売しない、中立な有料相談型FPへの相談が賢明な選択肢の一つです。「資産相談ドットコム」で、あなたの未来をともに描く信頼できるパートナーを見つけてみてください。

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